前作のヤツらに続き、『魔眼の匣の殺人』は予言という特殊設定でしたね。
デビュー作『屍人荘の殺人』が大ヒットしてしまっただけに、続編となれば相当なプレッシャーがあったことでしょう。
この記事は物語内で起きた事件の振り返りを中心にネタバレ解説をしています。
ご注意:
この記事は作品の詳細な内容を含んでおり、重要なプロットのポイントや物語の結末について言及しています。未読の方はくれぐれもご注意ください。
『魔眼の匣の殺人』の主な登場人物
- 葉村 譲 (はむら ゆずる)- 本作の主人公。神紅大学経済学部一回生。ミステリ愛好会会長。
 班目機関の調査のため剣崎比留子と共にW県I郡旧真雁地区へ赴く。
 
- 本作の主人公。神紅大学経済学部一回生。ミステリ愛好会会長。
- 剣崎 比留子 (けんざき ひるこ)- 神紅大学文学部二回生。ミステリ愛好会会員。横浜の名家のお嬢様。
 事件を引き寄せてしまう体質で、生き残るために推理力を磨き、数々の難事件を解決してきた。
 
- 神紅大学文学部二回生。ミステリ愛好会会員。横浜の名家のお嬢様。
- 十色 真理絵 (といろ まりえ)- 高校2年生。未来の光景を絵に描く能力者。
 祖父の十色勤は班目機関の元研究者。研究ノートから自身がサキミの孫であると確信し、好見に訪れた。
 
- 高校2年生。未来の光景を絵に描く能力者。
- 茎沢 忍 (くきざわ しのぶ)- 高校1年生。十色の後輩。オカルト愛好家。
 事故から救ってくれた十色に恩義を感じ、以後追っかけに。
 
- 高校1年生。十色の後輩。オカルト愛好家。
- 王寺 貴志 (おうじ たかし)- 会社員。バイクでツーリング中にガス欠となり、「魔眼の匣」に辿り着く。
 三つ首トンネル伝説の犠牲者となった若者たちの中の一人。
 自分も呪いの犠牲になるのでないかと恐怖している。
 
- 会社員。バイクでツーリング中にガス欠となり、「魔眼の匣」に辿り着く。
- 朱鷺野 秋子 (ときの あきこ)- 「魔眼の匣」のある好見地区の元住人。年齢は20代半ばぐらい。赤い髪をしており、服や靴も赤色を着用している。
 墓参りに寄ったところ、車のトラブルで立ち往生している師々田親子に出くわし、好見へ。
 
- 「魔眼の匣」のある好見地区の元住人。年齢は20代半ばぐらい。赤い髪をしており、服や靴も赤色を着用している。
- 師々田 厳雄 (ししだ いわお)- 社会学を専門とする大学教授。年齢は50歳代。口を開く度に憎まれ口を追加する癖がある。
 
- 社会学を専門とする大学教授。年齢は50歳代。口を開く度に憎まれ口を追加する癖がある。
- 師々田 純 (ししだ じゅん)- 厳雄の息子で、小学校低学年。
 
- 厳雄の息子で、小学校低学年。
- 臼井 頼太 (うすい らいた)- オカルト雑誌『月刊アトランティス』の編集者兼記者。
 地震による土砂崩れに巻き込まれ死亡。最初の犠牲者。
 
- オカルト雑誌『月刊アトランティス』の編集者兼記者。
- 神服 奉子 (はっとり やすこ)- サキミに仕える女性。年齢は30歳前後。
 五年ほど前に東京から移り住み、魔眼の匣でサキミの世話をしている。
 
- サキミに仕える女性。年齢は30歳前後。
- 天禰 サキミ (あまね サキミ)- 予言者の老女。超能力研究の被験者として班目機関に関わっていた。
 
- 予言者の老女。超能力研究の被験者として班目機関に関わっていた。
『魔眼の匣の殺人』の簡単なあらすじ

新生ミステリ愛好会に所属する葉村譲と剣崎比留子は、ある日、オカルト雑誌に掲載された予言記事に関心を持つ。
その記事は、大阪のビル火災を正確に予言し、二人が遭遇した紫湛荘での事件を予言していたという内容だった。
興味を持った二人は、この予言が班目機関によるテロ行為と関連があるかもしれないと考え、調査を開始する。
比留子が独自に情報を集めた後、二人は編集部に送った手紙が出されたW県に向かう。
旅の途中、田舎のバスで高校生と思しき男女と出会う。
目的地の好見が近くなってきたころ、少女はスケッチブックに一心不乱に絵を描く奇妙な行動をとる。
その後、バスが急ブレーキをかけ、少女が描いた絵が事故の予知だったことが明らかになる。
未来の光景を絵に描く予知能力を持つ十色真理絵とその後輩茎沢忍と共に好見へ向かうが、住民は誰もいない様子。
この地区の住人はすでに何日か前に村を離れており、その理由は不明だった。
探索を続ける中で、王寺貴士、朱鷺野秋子、師々田巌雄、師々田純と出会う。
それぞれの事情を抱えながら、朱鷺野の案内で「魔眼の匣」と呼ばれる謎の地区「真雁」へと向かう。
橋を渡った先には窓が無い四角い建物があり、その前には予言者・サキミに仕える神服奉子と名乗る女性がいた。
神服によれば、住民は何かが起きる前に村を離れたという。
建物の中で彼らは「月刊アトランティス」の記者・臼井頼太と出会う。
記事に掲載された予言の真相を探るためにこの地を訪れていた。
サキミは彼らの来訪を歓迎していない様子で、〝来月〟来るように告げる。
その理由は「真雁で11月最後の2日間に男女2人ずつ、計4人が死ぬ」という自身の予言によるものだった。
その場にいなかった十色と茎沢を様子を見に行くと、十色が激しく炎上する橋を絵にしていた。
「橋が燃えている!」と師々田の声。焼け落ちた橋の向こうには好見の住人らしき人影があった。
サキミの予言を聞いていた好見の住人が、自分たちに予言が及ばないよう、彼らを真雁に閉じ込めたのだ。
電話線も切られ、完全に外界から孤立。予言通りなら、この中から2日間で男女2人ずつ死者が出ることになる。
仕方なく、部屋割りを決めてこの建物に泊まることに。
翌日、建物内やその周辺を調査する中、またも十色が絵を描き始めた。
紙を埋め尽くす茶色。黒が混じった複雑な陰影。
直後、地震がが発生。臼井が土砂崩れに巻き込まれる。
救出はかなわず、最初の犠牲者が出てしまった。
予言が現実のものとなりつつある中、葉村と比留子は真相の究明を急ぐ。
3つの事件の概要

比留子は『魔眼の匣』内に隠し通路や仕掛けがないことを確認。
次に三徳包丁やキッチン鋏取り出し、驚くメンバーたちに向けて謎解きの道具として紹介する。
彼女は一連の事件を「サキミ毒殺未遂」「十色殺し」「朱鷺野殺し」と三つに区分。
その前提として、初対面の可能性、クローズドサークルの状況、そして男女二人ずつが死ぬというサキミの死の予言について触れ、続く推理への足がかりを築く。
比留子は十色殺害の事件から、犯人は王寺であると指摘する。
サキミ毒殺未遂
「十一月最後の二日間に、真雁で男女が二人ずつ、四人死ぬ」
そんな予言を受け、橋が落とされ真雁に閉じ込められた一行は、地震による土砂崩れに臼井が巻き込まれ最初の犠牲者を出した。
今後の方向性が決まらないまま迎えた夕食の席。鉛筆のスクラッチ音。 
振り返ると十色が取り憑かれたように絵を描いている。災いの前触れだった。
今回の絵は、黒く描かれた体の人物が苦しそうにしている側に赤い点が連なっている。
 「毒死か?」と疑念が浮かぶ。しかし食堂にいる者たちは無事で、不在のサキミに目が向く。
彼女の部屋へ急ぐ途中、廊下に赤い花が散らばっているのを目撃。部屋に入るとサキミは苦しんでいた。 
比留子の迅速な催吐処置のおかげで彼女は最悪の事態を免れたが、どうやらサキミは何らかの毒を摂取していたらしい。 
<推理>
王寺は十色の予知能力を利用し、十色の描いた絵の状況を他人に押し付けることで、自らの身の危険を回避しようとした。
食堂で十色の絵を盗み見た王寺は、赤い花をサキミの部屋の前に散らばらせ、十色の絵の通りの状況を作り出した。 サキミは孫である十色を救うため、自身が犠牲者の一人となろうと自殺を試みていた、と比留子は説明する。
サキミはある事情から最後までそれを隠し通そうとした。
サキミの自殺の試みと王寺の策略が偶然にも重なった結果、不可解な毒殺未遂現場ができあがってしまった。
十色殺し

午前零時。神服の慌てた声が食堂に響き渡った。「散弾銃が消えた!」。
サキミ毒殺未遂の疑いをかけた十色は、施錠された部屋におり自分では出られない状況だった。
驚きの中、一同が十色の部屋へ向かうと施錠されたはずの扉が開く。
彼女は胸を撃たれ、血塗れで倒れていた。
部屋の中は混沌としており、十色の最後の瞬間が壁に描かれた絵から伺えた。
茎沢は十色を失った衝撃のあまり、『魔眼の匣』の外、道なき山の中へ消えていった。
彼はのちに、熊に襲われたであろう無残な姿で発見された。
<推理>
事件の夜、王寺と師々田親子だけが10分以上食堂を離れており、犯行可能な時間があった。
朱鷺野の証言によれば、王寺が戻った後もロッカーの鍵は壊されていなかった。
師々田親子も交互にトイレを使ったという証言から考えれば、誰かが噓をついていなければ犯行不可能。
共犯の可能性が浮上する。
犯行現場には、十色の体を貫通した弾丸が背後の壁に当たった痕跡がなかった。
天井や壁の表面は脆いため、跡が残らないことは考えにくい。
弾丸は壁にかかっていた時計に当たり、それによって時計の針が折れてしまったのではないか。
勢いが減衰した弾丸は時計の針を砕き文字盤で跳ね返された。
根元から同じ長さの所で折れた長針と短針、それは針が重なったところに弾丸が当たったことを示していた。
神服が散弾銃の紛失に気づいた午前零時の犯行はあり得ない。
つまり犯行時刻は十時五十四分。この時間にアリバイがないのは王寺だけだった。
王寺は犯行現場や証拠が捏造された可能性を示唆するが、弾丸が十色を貫通した後の軌道や、時計の針に当たったことなど、奇跡的な確率に頼った現場の捏造は不可能であると結論される。
部屋が異様に荒らされていたのは、この証拠を隠すためだった。
また、このことから共犯は嘘の証言をした朱鷺野と自動的に判明。
朱鷺野殺し
静寂の中、突き刺すような悲鳴が廊下から響き渡った。
暗闇の廊下に白装束の人物が現れ、地下階へと急いで逃げ込んでいく。
葉村はその人物が白い装束を身にまとい、顔を頭巾で覆っていたことを確認。
また、手には長い槍のようなものを持っていた。
葉村が自室から出ると、雨漏りの水滴を吸い取るための雑巾を踏んだ足跡が地下への階段へ続いているのを発見。
階段の絨毯で途切れていた足跡は、地下の朱鷺野の部屋に続いていた。
朱鷺野の部屋は鍵がかかっておらず、床には仰向けに倒れた朱鷺野の姿が。
側らには木の棒。左足の靴下は半分脱げ、水滴で濡れていた。
朱鷺野の後頭部には小さな傷跡があり、床には血の跡がついていた。
師々田は彼女が転んで頭を打ち、事故死したと結論付けたが、比留子の自演で女性の被害者がすでに揃っていると思われていた状況もあり、まだ解明されていない謎が多く残されていた。
<推理>
後頭部の強打が死因だというのはその通りだが、朱鷺野の部屋の様子から彼女の死に第三者の関与が疑われる。
もし朱鷺野が白装束の犯人なら彼女の部屋に鍵がかかっていなかったのは不自然。
それに、床の血痕が乾いていたのは時間的に早すぎる。
十色殺しの件から、王寺と朱鷺野は共犯である。
地下の足跡は王寺が白装束を演じる前に、すでに朱鷺野が部屋で死亡した後に付けられたものであった。
王寺は朱鷺野の濡れた靴下を使用して地下から彼女の部屋まで足跡をつけ、〝本物〟の槍を部屋に置いておいた。
その後、彼は偽の槍を持って白装束で姿を現し、階段までの足跡を残し、階段の途中で白装束と靴下を脱いで自分の部屋に逃走した。
このトリックをバレにくくするため、廊下の電気が消されていた。
王寺の部屋の壁紙が雨漏りで剥がれていたことから、これが偽の槍の材料として使用されたことが考えられる。
師々田の部屋にあったウィジャボードも同様の目的で使用された可能性が考えられたが、それは丸められた形跡がなく、不可能であった。
以上の事実から、王寺が朱鷺野を殺害することは可能。
交換殺人と犯行動機

王寺自身は、サキミの予言をまったく知らない部外者であった。
彼が何の関係もない好見に足を踏み入れ、さらには閉じこめられてしまったのは、純粋に偶然の産物だったとされる。
そして、彼が女性である朱鷺野や十色を殺害したとされるなら、その動機が一切見当たらないのだ。
事件の大前提は、サキミの予言を信じる者が死の予言を逃れるために殺人を犯したというものであった。
男性である王寺が各事件に関与し、予言された人数を超える三人目の女性を殺害したとなると、この大前提は完全に破綻する。
なぜ彼がこれらの犯罪を犯す必要があったのか。
朱鷺野に共犯を持ちかけた理由と交換殺人
王寺はサキミの毒殺未遂から十色の予知能力をますます信じるとともに、死の予言に恐れを抱くようになった。
実際に予言された人数分の犠牲が出てしまえば、自分への被害はなくなる。
しかし、クローズドサークル内での犯罪は警察から逃れることが難しい。
そう考えた王寺は、朱鷺野に共犯を持ちかけた。
彼はサキミを毒殺しようと犯人が朱鷺野であると誤解していた。
事務室奥の倉庫で見つかった朱鷺野のネイルチップと毒物として使われていた亜ヒ酸が関連していると考え、朱鷺野に『毒を盛ったことを黙っていてほしければ、俺の計画に付き合え』と脅迫した。
朱鷺野は身に覚えがなく弱みを握ってしまった形になったが、朱鷺野もまたサキミの死の予言を恐れていた。
王寺の話は彼女にとっても有利に働く可能性があった。
二人は交換殺人により、互いの標的を殺害する計画を立てる。被害者との接点や動機がないことで警察にマークされる可能性を減らす目的もあったが、予言に基づく殺人の関係に皆が気づき、異性からの犯行を予測させることで、同性への警戒心を弱める狙いがあった。
本来、王寺が十色を、朱鷺野が男性を殺すはずだったところ、実行前に比留子が”死んだ”ことで、女性二人の犠牲が揃い、朱鷺野は手を汚さず目的を達成してしまった。
その先、朱鷺野は殺人に加担しようとするだろうか?
朱鷺野の部屋での口論の末、朱鷺野が頭を強く打ち気絶。
この時点で王寺は、朱鷺野が意識を取り戻すと自らの犯罪を暴露される恐れがあった。
彼は犯人としての朱鷺野のイメージを強調し、彼女を犯人に仕立て上げるためにリスキーな白装束の演技を取る決断を下す。
しかしその後、朱鷺野が意識を取り戻すことなく死亡。
王寺は彼女の死により予言よりも多い三人目の女性が死んでしまうという状況に直面する。
そして共犯の証となる朱鷺野のスマホを持ち去り、全ての証拠を隠蔽しようとする。
王寺はなぜ凶行に出たのか
比留子は王寺がなぜこのような犯行を行ったのか考えを巡らせた。
三つ首トンネルの伝説には、そのトンネルを男性が運転する車で通ると、焼け死んだ女の霊に呪われるという話が囁かれていた。
王寺はその伝説の犠牲者となった若者たちの中の一人であったのだろう。
仲間たちが次々と不慮の死を迎えている中、自分の命を繋いでいたのは、常に身に着けていた御守りのおかげだと信じていた。
しかし今回、王寺はその御守りを置き忘れ、それが彼の運命を一変させることになった。
彼の恐怖は、サキミの予言というよりもトンネルの呪いの犠牲になるのではないかという不安から来ていた。
生前の臼井の言動から、彼も三つ首トンネルに訪れたことがあるのは容易に想像できた。
王寺が目の当たりにした臼井の死は、彼の恐怖を確信へと変えた。
王寺は三つ首トンネルの呪いと、それに関連する予言の両方に怯え、自らの命を守るための策を講じることを決意したのであった。
サキミの真実
『魔眼の匣』のサキミは実は本物のサキミではなかった。彼女の正体は「岡町」という名前の女性。
岡町はかつて十色勤の助手として彼の研究を支えていた。
公安にマークされた研究所から十色勤が逃げる際、彼は目くらましのため、サキミの身代わりとして岡町を残していった。
『迎えに来る』という彼の言葉は、彼女にとって未来への望みであったが、それは果たされることはなかった。
その恨みから、予言者としての権威を守りつつ、十色勤とサキミの平穏な生活を壊す方法を模索し、岡町はマスコミや『真雁で四人死ぬ』という予言を利用した復讐計画を立てる。
本物のサキミの孫娘である十色も犠牲になったこの惨劇。裏から手を引いていた黒幕は、他ならぬこの岡町だった。
思惑通り、自分の手を汚さず、十色の殺害には確かに成功した。
しかし班目機関の情報は封殺され、十色勤やサキミにはおろか、一般人の目に触れることはない。
サキミの予言の中での自殺に失敗した岡町が自身の権威を守るには、自分の死を予言し、その通りに命を絶つ。
その方法しか残されていなかった。
サキミの人生を根こそぎ否定したかった岡町の凶行。失敗や敗北を認められず、自分を偽り予言を振りかざし続けた。
彼女の選択は彼女自身の意志。予言や呪いのせいなどではない。
『魔眼の匣の殺人』ネタバレ感想・まとめ
前作『屍人荘の殺人』はエンターテインメント要素が強めでインパクトがありましたが、続編の『魔眼の匣の殺人』は暗い感じのミステリー色が出ていました。
正直、前作に比べると一段落ちてしまいますが、それでも重圧の中でこのクオリティにまとめてきたのは素晴らしいです。
予言によって時間制限もある中のクローズドサークルミステリーということで十分に楽しめました。
ミステリーファンであればこちらを推す声も多そうです。
予言の使い方については、なかなかに巧妙だと感じました。
ただ、サキミや十色の特異な能力が物語を進める上でどうしても中心になってくるわけですが、個人的にはその真偽が最後までモヤモヤとしてしまい、ちょっと気になりました。
もう少し、これらの能力に確固たる存在感を持たせても良かったのではないかと思います。
犯人の王寺に関しては、その動機の理解に苦しんだ部分も正直ありました。
予言を信じるに至った背景に、もう少し深みがあっても良かったかなと。
予言に基づいて行動するにしても、その信念の裏付けがもっと描かれていれば、彼の心情にもっと共感できたかもしれません。
三つ首トンネルと予言の件があったにしてもビビりすぎて色々ボロが出ていた気がします。
三つ首トンネルの件は魔除けのタトゥーを入れるほどだったのでわかるにしても、サキミの予言はなぜそこまで信じていたんだろうか。
そんなことで恨みも何もない王寺に十色は殺されたわけですが、十色はもちろん茎沢くんもちょっとかわいそうでした。
大好きな十色を理不尽に殺されるし、自分は人知れず熊にズタボロにされるし。
予言成立のための人数合わせみたいな感じでかわいそう。短い人生の最後が不幸すぎる。
サキミの正体に関するどんでん返しは驚きました。
岡町についてはまんまと男だと思わされてしまいました。
このラストシーンは、物語全体への評価をグッと引き上げる効果がありましたね。
いくつかの細部には議論の余地が残るものの、この作品が持つ独特の雰囲気と展開は、ミステリーファンならずとも楽しめたのではないでしょうか。
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