小説『此の世の果ての殺人』ネタバレ解説考察|事件の真相と伏線

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今日は、江戸川乱歩賞を受賞した荒木あかねさんのデビュー作『此の世の果ての殺人』を深掘りしていきます。
地球滅亡を目前に控えた世界での連続殺人事件を描いたスリリングなミステリーでしたね。

ハルとイサガワ先生というユニークなバディが、謎に満ちた事件の真相に挑みます。
キャラクターたちの複雑な背景や人間模様、そして予想を裏切る展開が詰まったこの作品を、じっくりとご紹介します。

それでは、物語の核心に迫っていきましょう。

ご注意:
この記事は作品の詳細な内容を含んでおり、重要なプロットのポイントや物語の結末について言及しています。未読の方はくれぐれもご注意ください。

『此の世の果ての殺人』主な登場人物・用語

  • イサガワ先生
    1. 元警察官であり、現在は太宰府自動車学校の教官を務める。以前は南福岡警察署に勤務していた。
      おしゃべりが好きで早食いが得意な元柔道部員。長年のヤクルトスワローズファンでもある。
      見た目は30代半ばだが、実際の年齢は不明。異常なまでの正義感を持ち、感情に任せて許すか許さないかを決める性格。

  • 小春 (こはる)
    1. 福岡県太宰府市で生まれ育ち、現在23歳の社会人。実家はコンビニで、愛称はハル。
      父が首吊り自殺し、母もすでに家を出て行ったため、弟の成吾と二人で実家に暮らしている。
      不幸な水曜日以前は地元の印刷会社に新卒として勤務していた。
      幼い頃から星が好きで、天文学者になることが夢だった。

  • 成吾 (せいご)
    1. ハルの弟であり、年齢は17歳。小惑星の衝突が公表される前から、自室で外界との関わりを絶っていた。
      繊細で運動が苦手であり、虫も殺せないほど大人しい性格だったが、中学3年生のときに同級生の中野イツキをいじめていた経歴がある。
      出身中学は明壮学園の中等部。

  • 市村 ハジメ (いちむら はじめ)
    1. 元警察官のイサガワの後輩であり、現在は福岡の統合調整官として活動している。
      小惑星衝突が公表される以前は広島県警本部で捜査二課長を務めていた。
      背が高く細身で、短く切りそろえた髪は清潔感があり、フレンドリーな雰囲気で社交的な性格。

  • 了道 光 (りょうどう ひかる)
    1. 23歳で、当初は「ヒノ」と名乗っていた。長身、目を引く銀髪、耳には十個以上のピアスをしている。
      兄の脱獄を手伝うため、福岡までやってきた。意外と幼い顔をしており、生意気な口調にもどこか可愛げがある。
      気遣いのできる兄とは対照的に、光は明け透けな物言いをするが、不思議と腹は立たない。

  • 了道 暁人 (りょうどう あきと)
    1. 車椅子に乗っている男性で、当初は「アキタ」と名乗っていた。
      饒舌で物腰柔らかな雰囲気を持ち、癖のないさらさらの髪と黒々とした切れ長の目が特徴。
      8年前に起きた了道事件の犯人である。先天性脛骨欠損症により、2歳のときに両脚を切断している。

  • 高梨 祐一 (たかなし ゆういち)
    1. 殺人事件の被害者で、博多で発見された。17歳のフリーターで、高校を中退している。

  • 立浪 純也 (たつなみ じゅんや)
    1. 殺人事件の被害者で、糸島で発見された。福岡市西区の承南高等学校に通う17歳の品行方正な学生。

  • 日隅 美枝子 (ひずみ みえこ)
    1. 殺人事件の被害者で、二日市法律事務所の弁護士。いじめ事件で中野イツキの担当をしていた。
      非常に几帳面な性格で、児童虐待やいじめ問題など、子どもの権利に関する業務を得意としていた。
      特徴的な唇と艶やかな黒髪のショートカットが特徴。

  • 小惑星「テロス」
    1. 直径7.7キロメートルを超える小惑星2021NQ2、通称「テロス」は、2023年3月7日にTNT火薬4500万メガトン相当の運動エネルギーを伴って地球軌道と交差する。
      低角度で大気圏に突入し、中国上空を通過して熊本県阿蘇郡に衝突する予定である。
      2021年7月15日にクロアチアのヴィシュニャン天文台で発見されたが、その危険性は2022年9月7日まで公表されなかった。
      その発表の日を多くの人々は「不幸な水曜日」と呼ぶ。
      衝突による直接的な被害とその後の環境変動により、人類の滅亡が避けられないとされている。

主要事件の概要

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2022年9月中旬
中野イツキは元担当弁護士の日隅美枝子から連絡を受ける。
かつてのいじめ加害者たちが小惑星衝突前に謝罪したいと申し出た。

12月29日 夜9時(面会予定時刻)
最初に中野イツキが明壮学園中等部の校門に到着。
イツキは3年10組の教室で、市村の凶行を目撃。悲鳴を上げるも殴られて昏倒する。
成吾、高梨、立浪、日隅が現れ、成吾がイツキを助けようと市村に向かっていき殺害される。
イツキと他の三人は校舎から逃げる。
市村は駐車場に停めていた車で校舎から逃げ出した4人を轢き殺そうとする。
高梨、日隅は撥ね飛ばされて怪我を負う。

高梨、立浪、日隅がそれぞれ車で逃げる。
日隅はイツキを自宅に送り届ける。

21時過ぎ~22時頃
市村はまず高梨を追尾し、住吉通りのコンビニ駐車場で高梨を殺害。

23時~翌30日の1時頃
その後、立浪の自宅へ向かい、立浪を殺害。

12月30日 早朝4時10分
銀島が博多区住吉四丁目のコンビニ駐車場で高梨の遺体を発見。

5時頃
了道光が立浪宅で立浪の遺体を発見し、警察に知らせるメッセージを残す。

6時20分
日隅が成吾に宛てたメッセージ(下書き)を残す。
『本当にごめんなさい』

その後日隅は太宰府署を訪れたが、不運にも統合調整官として赴任していた市村に捕えられる。
市村は最後の目撃者(中野イツキ)の居場所を吐かせるため拷問。

午前11時
警察が立浪宅で遺体を発見。

16時頃
銀島が立浪の死体発見の連絡を受ける。

21時~24時
市村は執拗な拷問の末に日隅を殺害、太宰府自動車学校の教習車に遺体を隠す。

12月31日 午前8時44分
ハルとイサガワが教習車のトランクで日隅の遺体を発見。

『此の世の果ての殺人』伏線やヒントなど

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イサガワとハルの会話(立浪の車について)
立浪の自宅にて、家の前に停めてあった車を見たときの会話。
イサガワはシートに埃が積もっていないことや、車体が斜めのまま停められていることを指摘します。

立浪は父親の車を使って面会場所に来ていましたが、市村の犯行現場を目撃し、慌てて逃げ帰りました。
その結果、車は斜めのまま停められていたのです。
立浪がただの被害者ではなく、事件の目撃者であることを示唆していました。

市村のパトカーのへこみ
暴走タクシーと市村の繋がりが一番わかりやすいであろう描写。
ハルとイサガワが市村のパトカーに遭遇した際、フロントバンパーが大きくへこんでいるのを見つけます。
市村は「二、三日前に山道を走っていたときに首吊り死体が落ちてきてへこんだ」と説明。

フロントバンパーのへこみは実際には市村がパトカーで人を轢いた痕跡です。
後の展開で市村が犯人であることを明らかにするための布石、伏線となっていました。

ひしゃげたガードレールと黒い塗料
博多区役所に向かう途中の道路で大きくゆがんだガードレールを発見。
ガードレールには事故車両のものと思われる黒い塗料と血痕がありました。
後に知ることになる暴走タクシー事件と市村のパトカーが繋がる伏線でした。

日隅と高梨の傷痕
伴田整形外科の先生が日隅の遺体を見た際、肩に脱臼の痕跡がありました。
また、銀島が高梨の遺体の状況を説明する際、左太腿の外側と背部に多数の皮下出血が見られたことが述べられています。
これらの傷は殺害される前に激しく打ち付けられたか攻撃されたものであるとされていました。

これらが市村と被害者たちの遭遇時に生じたものであるとしてで、事件の真相に迫る手がかりとなりました。

心臓の早鐘
「NARU」の文字を初めて見たときにハルがドキドキしていたのは、NARUの正体を知っていたから。

伴田整形外科屋上
最初に伴田整形外科の屋上に訪れたとき、ハルが成吾に伝えなければいけなかったことがあったという描写は、同じくNARUの正体を知っていて状況を伝えたかったから。

デリカD:2
銀島が高梨の乗っていた車をソリオと間違えて伝えたのにもかかわらず、ハルはデリカD:2にまっすぐ近寄りました。
空色のデリカD:2はハルの母親の車で、その車を知っていた伏線。
最序盤にハルの家の駐車場が紹介されたときは、車種の言及もなく、4ヵ月前に消えた母親が乗って行ってしまったように書かれていました。

小説『此の世の果ての殺人』ネタバレ感想

小説『此の世の果ての殺人』を読んでみて、まず名前の表記がカタカナだったり、名字か名前のどちらかしかわからない人物が多かったので、その点がどう絡んでくるか気になってました。
最初は理由もなく犯人はイサガワと単勝1点買いをしてしまいましたが全然違いましたね。普通に正義の味方でした。

犯人自体は手がかりが揃ってくれば推理しやすい方でしたが、細かい伏線もちょこちょこあってミステリーとしても十分楽しめたと思います。

終末効果も大きいと思いますが、キャラクターそれぞれの行動には読んでいて引き込まれる部分もありましたね。

捜査に乗り気じゃなかったハルが最後には七菜子とコンビで市村を倒す展開は結構に爽快でした。
七菜子まだまだ子供なのによく頑張った。

犯人の市村の動機は少し薄く感じましたね。あんな感じだと通常時でも何かやらかしそうな雰囲気がありました。

そんな奴に光がやられてしまったのは悲しかったです。何だかんだで良い奴だった。仲間に犠牲が出てしまうとは。

可哀想ついでにいうとやっぱり日隅が不憫。めちゃくちゃに拷問されて痛かったろうに。
人類滅亡寸前にして自分を犠牲に一人の少年を守る姿勢。尊敬します。

それと中学校で市村から逃げたとき、日隅がパトカーだと気付かなかったのは暗闇の中で視力が低かったから、と言っていましたが、高梨はどうだったんだろう。
視力が良ければ判別できたような書き方ですが、高梨もパトカーと気付いていなかったようなので気になりました。

福岡の土地勘がないので、その点はもう一段上を楽しみ切れなかったところかなと思います。

『此の世の果ての殺人』が気に入った方へのおすすめ

『ちぎれた鎖と光の切れ端』 – 荒木あかね

荒木あかね氏が手がけるこの作品は、緻密なプロットと独特の叙情性で高く評価されています。孤島でのクローズドサークル的な事件と、市街地での新たな謎が複雑に絡み合い、読み進めるうちに真相へと引き込まれます。独特のキャラクター描写と緻密なトリックが織り成す本作は、幅広いミステリーファンに支持されています。



『マスカレード・ホテル』 – 東野圭吾

緻密なトリックとキャラクターの成長が融合した、東野圭吾氏の代表的ミステリー。連続殺人の次なる舞台は高級ホテル。新田刑事が潜入し、ホテルマン山岸と協力して犯人を追います。ホテルという閉ざされた空間の中で繰り広げられる人間ドラマと推理が魅力です。



『天使のナイフ』 – 薬丸岳

薬丸岳氏が手掛けたデビュー作は、社会派ミステリーの金字塔です。復讐心と正義が交錯する中で、主人公が選ぶ道とは? 深く考えさせられるテーマと予測不可能な展開が、読者を最後まで引きつけます。

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