小説『medium 霊媒探偵城塚翡翠』ネタバレ解説考察

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相沢沙呼さんの小説『medium 霊媒探偵城塚翡翠』。んー騙されましたね。
ジェットコースターみたいにクルーっと一回転してもう半回転した後、安全レバーを外された感じ。

推理に関しては無理やり感はありましたが、そんなことはどうでもよくなりました。

この記事ではネタバレありでポイントを振り返ります。未読の方はご注意ください。

ご注意:
この記事は作品の詳細な内容を含んでおり、重要なプロットのポイントや物語の結末について言及しています。未読の方はくれぐれもご注意ください。

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』登場人物

  • 香月 史郎 (こうげつ しろう)
    1. 推理作家。大学時代の写真サークルの後輩に付き添ったことをきっかけに城塚翡翠と知り合う。翡翠の特異な能力と彼自身の鋭い推理力を組み合わせ、難解な事件の真実に迫る。

  • 城塚 翡翠 (じょうづか ひすい)
    1. 20歳くらいとみられる美しい黒髪の女性。翠の瞳。死者の魂を呼び寄せる霊媒能力を持つ。都内の高級マンションを拠点に、無料で死者にまつわる相談を受け付けている。

連続殺人の犯人は?巧妙な伏線とミスリード

物語の全体を包む連続死体遺棄事件の犯人・鶴丘文樹は、香月史郎でした。
2人が別々の人物であることは叙述トリックによって巧妙に隠されていましたね。
しかしこれは途中で見破った方も多いようです。

作中で香月の見た目に関する記述はほとんど出てきませんし、鶴丘についても営業マンらしい地味な短髪・・といった程度です。
また、鶴丘視点のインタールードでは翡翠を気持ち悪く褒め称えた後、「彼女の側にいる人間が邪魔だが」「懸念だった彼女の側にいる障害」と発言し、それが香月だとミスリードさせています。

インタールードⅠでの鶴丘のシーンでは、被害者の体をシャワーで洗っています。
最終話で犯人は死体を漂白剤を使うほど入念に処理するようになったと語られており、そのタイミングは香月が翡翠と知り合った時期と一致しています。

最初の泣き女事件の際、香月は第一発見者として死体を発見しDNAを警察に提供しています。
このため、以降の犯行では体液を残すことができなくなり、被害者の身体を入念に洗うようになったと考えられます。

連続死体遺棄事件の8人目の死体が見つかった日、香月は多忙なスケジュールを送っていました。
推理作家としての活動も描写していましたが、この「仕事」とは実際には殺人という「仕事」を指している可能性が高いです。

名前については気付いてしまえばかなり直接的なヒントがあります。
「つるおかふみき」 → かおる つき ふみ (香 月 史) に男を表わす「郎」。

香月史郎は本名の変則的アナグラムで作ったペンネームでした。

3つの事件の推理

最終話、真犯人の香月史郎(鶴丘文樹)にとらわれた翡翠は、自分がインチキ霊媒師であることを告白します。
香月が取り乱している中、翡翠はこれまでどのように事件の推理をしてきたか話し始めます。
読者としても、じゃあ霊視なしでどうやって解いたのか、と読み返した人もいるんじゃないでしょうか。

正直、疑問点もありますが、推理のロジックを解説します。
端折ったりもしてますけど復習にどうぞ。

第一話 泣き女の殺人

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香月は大学の後輩・倉持結花から、霊に悩む相談を受ける。
霊能者・城塚翡翠との出会いは驚きの連続で、彼女は結花に危険が迫っていると警告。
調査の日、結花の部屋で彼女は血まみれで発見される。翡翠の霊視と香月の観察から、眼鏡のガラスの手がかりを発見。
結果、結花の友人・舞衣が犯人であることが明らかに。舞衣は恋の嫉妬から結花を殺害していた。

泣き女の殺人の犯人特定ロジック

アイスコーヒーのペーパードリップでは多量の氷を用いる。現場に残されていた水滴は、氷が溶けたもの。
事件が起きた当日の夜から翌朝にかけては涼しかったため、氷がすぐに溶けずに水滴として残ることは十分考えられる。
(結花の胃からコーヒーは検出されなかったが、それは結花がアイスコーヒーを淹れることを否定するものではない。)

結花は帰宅してから死亡するまでの間にアイスコーヒーを淹れた。保存容器がないため作り置きではない。
コーヒーの香りや部屋の明かりを考慮すれば、空き巣が侵入する可能性は低い。

事件当日の結花の状況から、一杯分だけ淹れるのが難しく手間のかかるコーヒーをわざわざ1人分だけ淹れただろうか。
コーヒーサーバーはキッチンに空のまま置かれていた。つまり、誰かと2人でコーヒーを飲んでいた。
誰かと夜更かしをするつもりなら、手間をかけて2人分作る価値はある。

ダイニングテーブルの壁側の2つの椅子には荷物が置かれており、これは犯人が片付けられなかったもので偽装工作ではない。
ソファは狭い二人掛け。いずれにしても犯人と結花は横並びで座っていた。

結花は香月を好意的に思っていて、他に恋人の存在は確認されていない。
結花の性格も考慮すると、意中の相手がいるのに夜遅くまで男と仲良く過ごしていたとは考えづらい。
よって親しい女性と2人でコーヒーを飲んでいた。

壁を見ながらパーティーをしたとは思えず、テレビが前にあるソファに座った。
ソファ前の丸テーブルは背が低く、床に柔らかいカーペットも敷いてあるため、グラスを落としても割れない。
ダイニングテーブルの近くで割れていたグラスは、犯人が意図的に割ったもの。
犯人が何かを隠すためにグラスを割った可能性があり、その「何か」は犯人のメガネの破片であると推測される。

小林舞衣は事件の後に新しいメガネを身につけて出勤してきた。
この事実を基に、犯人は小林舞衣と結論。

第二話 水鏡荘の殺人

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深夜、水鏡荘で黒越篤が殺される。凶器はトロフィー。
翡翠の霊視で別所幸介が犯人と特定。香月は鏡の指紋、パスワードロックの時間などの手がかりから、
別所が黒越を殺害したことを確信する。別所は自分のアイディアの盗用を巡る口論で黒越を殺害したと自白する。

水鏡荘の殺人の犯人特定ロジック

黒越が参加者に配った新刊『黒書館殺人事件』。宅配便で届いた10冊の中から1冊が行方不明に。
黒越が確認のため1冊取り出し、仕事部屋のデスクに置いたというのはありえそう。

しかし黒越の死体を発見した時、その本はどこにも見当たらない。
犯人が殺害時に新刊に指紋を残し、それを隠すために持ち出したと推測。
さらにデスクには奇妙な血の印が。これは犯人が新刊の指紋を隠すための偽装行為である可能性が高い。

事件の夜、翡翠と香月にいた。このリビングを通らないと、黒越の仕事部屋に行くことはできない。
この時間帯にリビングを通過したのは有本、新谷、別所の3人。

有本は黒越の部屋に仕事の打ち合わせで入室していたため、指紋を残すリスクは無い。
一方、新谷はワンピースを着ていて、持ち出した本を隠す場所がない。

別所は本が届いてから解散して各自部屋に戻るまで翡翠にべったりだった。
別所が黒越の仕事部屋の本に指紋を残せるとしたら、深夜に黒越を殺害するその時だけ。

よって、犯人は別所。

第三話 女子高生連続絞殺事件

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香月はサイン会で、セーラー服の少女・藤間菜月から学校の殺人事件を解決を頼まれる。
初めの被害者・武中遙香、次に北野由里、共に絞殺。翡翠の霊視で「犯人は女の子」と特定。
そして驚くべきことに、菜月自身が第三の犠牲者として発見される。

犯人探しの中で、写真部の蓮見綾子が疑われるが、写真の知識から別の女子生徒・藁科琴音が浮上。
最終的に琴音はもう一人の殺人を試みるが、香月と翡翠に間一髪で阻止される。

女子高生連続絞殺事件の犯人像特定ロジック

北野由里が倒れてた現場には彼女自身の足跡がついたスカーフが二つ折りで落ちていた。
このスカーフは高校の制服のもので留め具がなく、一端を引っ張ったくらいでは簡単にほどけない。
自分で外した可能性が高い。

犯人が使用した布状の凶器は?
犯人はなぜ被害者の爪を切り取ったのか?
最初の事件では、被害者がなぜ犯人に対して抵抗しなかったのか?

被害者の制服のスカーフの色は学年によって異なる。
色が違うということは女子同士スカーフを交換し合うという状況もあり得る。

第二の事件で犯人はスカーフの交換を提案し、北野を近づけ首を絞める。
その時に落としたスカーフを自分で踏み、足跡がついた。

足跡がついたスカーフを遺体に戻すのは不自然で、凶器もバレてしまうかもしれない。
なので犯人は衣服を剥ぎ、動機をはぐらかせた。

最初の事件では、交換のために巻いてあげると言ってスカーフを結びな直す動作であれば、
正面に立って行っても違和感はないし、被害者も抵抗しない。

犯人が被害者の爪を切っていたのは、犯人自身の皮膚片だけでなく、スカーフの繊維が残ることを防ぎたかったため。
凶器が発覚すると犯人像に結びついてしまうから犯行手口はこれで間違いない。

犯人像は被害者と親しく、スカーフの交換を持ちかけられるセーラー服を着た女子。
被害者の被害当時の学年と学校以外の活動を考慮し、消去法で考えると、犯人は同じ学校の3年生の女子生徒であると推測される。

城塚翡翠の正体と所業

城塚翡翠については二転三転と驚かされました。
最終話、これまでと一転しこれでもかと悪女ムーブをかまして香月を煽りまくり無事決着しましたが、エピローグで本当の本当の正体が垣間見え、さらに魅力アップでした。

城塚翡翠がインチキ霊媒師であることは、作品の表紙からも一応読み取ることができます。
タイトルは『medium 霊媒探偵城塚翡翠』。最初からちゃんと「探偵」をしていたんですね。

表紙の指を合わせるようなポーズは、シャーロック・ホームズが考え事をするときによく出る仕草と一致します。
シャーロックホームズハンドとか尖塔のポーズというらしいです。
作中、翡翠自身もホームズの言葉を引用したりしています。
香月のワトスン役ではなく、自分がメインの探偵であることを示唆しています。

Appleの創業者の一人、スティーブ・ジョブズも講演などで時折このポーズをしています。
心理的に強い自信がある人、高揚感が高まった時などに出る傾向がある仕草のようですね。

確かに、表紙の表情は最終話でまでの翡翠からは想像ができないような、人を見下した、もとい自信に満ちた表情に見えますね。
最終話ではこの表紙を描写したであろうシーンも出てきます。
まさに”すべてが、伏線”でした。

霊視を思わせたインチキ

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香月との初対面での職業見破り
翡翠のマンションはカメラとマイクが至る所に取り付けられている。。
訪問前の香月たちの話をしっかりと拾っていたので霊能者っぽく職業を言い当てた。

結花の”触られた”感覚
ただのマジック。

泣き女の都市伝説
バーナム効果の一種。人々が自分に当てはまると感じやすい情報を利用して、泣き女の話を紡ぎ出していた。

駅での男たちの過去の行いの指摘
翡翠とその男たちはグルだった?

連続絞殺事件における手口
ドジっ子の小芝居を上手く演じ、藁科のスマホを細工してその後の位置情報をしっかりとトラッキング。
香月にもバレずに藁科の動きを把握しつつ、公園での最終犯行は千和崎真との協力でうまく遅延させ、香月が犯行を止める時間を稼いだ。

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』ネタバレ感想まとめ

この作品、城塚翡翠のあざとさを受け入れられなかった人からすればキツかったでしょうね。
幸い私は全く問題なかったです。

この情報化社会。現実にいれば逆に警戒してしまいそうですが、フィクションなので騙されてOK。

翡翠のセリフにも、「女性から見れば明らかに芝居とわかる」というのがありますが、男性から見てもわざととわかる、あるいはわかった上で相手に合わせて様子を見る、という場合はあると思います。
でもこの物語のように殺人事件とか非日常的な状況を共にしていれば騙されてしまうでしょうね。

私は短編集になるとどうもササーと読んでしまう性格のようで、各事件の突っ込みどころもそれほど気になりませんでした。
総じて、かなり純粋に物語の魅力を楽しめた方だと思います。

続編は長らく放置しているんですけど読まないといけませんね。

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